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JagaJaga図書館




北大北図書館の職員がおすすめする、北大生に読んでもらいたい本をご紹介。
その名も”JagaJaga図書館”

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英語が苦手な人に
英語以外の言語や,複数の言語に興味がある人に
黒田龍之助(2000)『外国語の水曜日』現代書館

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著者は著者はスラヴ語学専攻の語学教師。出版当時(2000年)は,ある理系大学のロシア語教師だった。

「楽しい雰囲気がなければ語学の学習は絶対にできない」 こう信じる著者の研究室には,語学(おそらく,著者自身にも)に魅せられた学生達が集まってくる。

この本は,内容的に四つの部分に分かれているが,研究室に集う学生達との交流を描いた章が,特に印象深い。

<エピソード1> 必修ではないロシア語上級という授業を履修する学生たち。選択必修の初級,中級を終えてさらに自主的に学びたいという学生が集まる授業だから,人数は少ない。教材として,科学の読み物を,と考える著者に対し,学生は小説や物語を読みたいと言う。そこで,ラスプーチンの小説を講読することにし,最終的に私家版の日本語訳ができあがった。この私家版はその後,研究室に出入りする学生に読み継がれることになる。

<エピソード2> 「よく分かんないなあ」とため息をつきながら,フィンランド語でムーミンのマンガを読む学生。彼はとても物静かで目立たないが,持ち前の根気と粘り強さでフィンランド語の教科書を独学でやりとげてしまう。まもなく著者のフィンランド語のレベルを超えてしまった彼に,著者は今まで買い集めたフィンランド語関係の書籍を少しずつ譲り与えることにする。

「英語ができれば十分なのに,なぜ第二外国語なんてやらなければいけないの?」 特に理系の学生には,このような疑問を持っている人も多いだろう。このような考え方に対し,著者は言う。

“理系大学を卒業した学生も,エンジニアやさまざまな専門家として外国に赴任する可能性は大いにある。もちろんどこの国に行っても,仕事上は英語だけで十分であることが多いだろう。しかし,たとえばフランスやカナダで生活をするのならフランス語を知っていたほうがいいし,旧ソ連地域だったらロシア語の知識があるほうが,仕事もよりスムーズに進むはずだ。特に多くの人と協力して事業を進めていく場合,必ずしも全員が英語を話すとは限らない。そんなときに現地の言語が少しでも話せたら,人びとの評価も変わってくるのではないだろうか?”

“理系の学生の外国語に対する抵抗感をなくす,そのために私はロシア語を教えるのだと考えているのである。”

“大学における外国語の役割とは,新しい外国語を学ぶノウハウを身につけるためのシミュレーションなのだと考える。”

“外国語アレルギーを治療し,新しい外国語を独学できる能力を身につけ,たとえば明日から三年間ブラジルに行けと言われれば,にっこり笑って書店に行き,『ブラジル・ポルトガル語入門』なるものを買って飛行機の中でこれを読む。こういう人を育てるのがわたしの理想なのである。”

語学を学ぶ楽しさが伝わってくる本である。

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新入生じゃなくても,役に立つ
東京大学出版会『UP』編集部編(2016)
東大教師が新入生にすすめる本』東京大学出版会

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自分が興味を持った学問分野についてもっと知りたいと考えたとき,どんな本を読んだらよいのか,悩んだ人は多いのではないだろうか。図書館や書店で探そうにも,あまりにもたくさんの本があり,途方に暮れた人もいるだろう。

このような場合は担当教員に尋ねるのが一番だろうが,気軽に聞けない場合も多い。そんなときには,この本が役に立つ。

この本では141名の東大教師が,新入生が専攻を選ぶときのヒントになる本,その専門分野へのイントロダクションになる本,その分野の研究の奥行きを垣間見せてくれるような本,専門に限らず印象に残った本,等々を紹介している。

よさそうな本が見つかったら,北大にあるかどうか蔵書目録で検索を。おそらくほとんどの場合は所蔵しているはず。運悪く所蔵していなかったら,ぜひ図書リクエストで申し込みを。

なお,北大図書館でも本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~』というWebサイトを公開している。こちらもぜひアクセスしてほしい。

<補足>

この本は東京大学出版会の広報誌UPの4月号に毎年掲載されている同名のアンケートのうち,2009~2015年分を元にしたもの。もっと以前のものを読んでみたくなった人は,文春新書の同名図書(全2冊)を参照してほしい。

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札幌最後の名画座「蠍座」の全仕事
映画鑑賞のお供に
田中次郎編著(2016)『札幌の映画館<蠍座>全仕事』寿郎社

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蠍座は,北大正門から徒歩5~6分のところにあった個人経営の映画館である。1996年6月に開館後,名画座として旧作や道内未公開作を中心に上映し,2014年12月30日,惜しまれながら閉館した。

蠍座では毎月,「蠍座通信」というパンフレット形式の番組表を発行していた。開館から閉館まで18年6ヶ月にわたる「蠍座通信」全222号を全て収録し,館主であった田中次郎氏による書き下ろしを加えたのがこの本である。

この通信には,田中氏による上映作品紹介のほかに,映画や映画館,世相に関する辛口のコラムが掲載されていた。蠍座と「通信」のファンだった私は,映画を観られないときでも,「通信」をもらうためだけに通ったものである。

この本の巻末には上映作品と監督名の索引があり,自分の好きな映画がどのように紹介されているのか等,いろいろな楽しみ方ができる。おもしろそうな映画を見つけたい人にもおすすめ。

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