元首相が凶弾に倒れてから、3ヶ月。
一発の銃弾が巻き起こした風は、旧統一教会を巡る大きな嵐となって、今なお収まることを知らない。
統一教会を巡る問題が議論される今。長年、統一教会について研究している北海道大学文学部の櫻井義秀先生にお話を伺いました。櫻井先生は銃撃事件後、さまざまなメディアで改めて統一教会の問題に対して警鐘を鳴らしています。
*本記事では「宗教法人 世界平和統一家庭連合」を取り上げますが、文中では「統一教会」という表記に統一します。
時代に合わせた勧誘方法
―統一教会の学生支部である原理研究会(通称「CARP(カープ)」。「原理研」「原研」とも)について教えてください。
原理研究会はさまざまな大学にその支部を置き、正体を隠し学生に近づき、社会貢献、特に近年ではSDGsに絡めた環境活動を通じて統一教会への学生を勧誘。さらには幹部候補の育成も行っているといいます。北大ではどのような活動をしているのでしょうか?
櫻井先生
「石狩の海岸でゴミ拾いの活動をしている学生がいるが、あれは統一教会ではないのか」という指摘が、北大の学生相談室に寄せられたこともあるので引き続き注視すべきでしょう。
学生同士のコミュニケーションがSNSへと移行していることから、原理研究会も10年以上前から、SNSを使った勧誘に力を入れています。ただあくまでも、勧誘のきっかけが、SNSを使ったものになっただけで、最終的にはセミナーという対面活動に誘い出すことには変わりありません。
勧誘・入信は誰にでもあり得る
―統一教会の古参信者は、新しい信者のどんな些細な悩みでも、親身になって聞くといいます。
全ての悩みや不合理と、教義たる「原理」はどこかで繋がっているというのが統一教会の方針であるためです。そうなのであれば、心に何らかの闇を抱えた学生の方が統一教会の被害に遭いやすいのでしょうか?
櫻井先生
交通事故に遭うリスクと同じです。統一教会に入信するリスクは誰にでもあります。
「悩んでいる人の方がカルト宗教にハマりやすい」と一般的には考えれられていますが、 統一教会が勧誘している場面にたまたま遭遇し、感化されて入信してしまう事例もあるのです。
初めから「統一教会であること」を出して勧誘するわけありません。最初は「学習サークル」などと単なる人の集まりを標榜しているため騙されて入信してしまうのです。
交通事故に遭うリスクと同様に、統一教会に勧誘され、入信してしまうリスクは誰にでもあるのです。
”自虐思想”につけ込まれる
―「統一教会の教義自体に踏み込んで批判をすれば、現信者の信教の自由を害することになる。ゆえに統一教会の教義自体には踏み込まず、教会側の違法行為のみに焦点を当てて批判すべきだ」との主張が一部でなされています。
このような主張に関して先生はどのようにお考えですか?
櫻井先生
その主張は、教会の本質をなんら捉えていません。
なぜ、統一教会が違法行為に走るのか。そもそも統一教会独自の教義があるからに他なりません。
具体的にいえば「韓国がアダム国家であり、日本がエバ国家である。ゆえに過去、朝鮮半島が日本に植民地支配されたことについて、日本は贖罪しなければならない」というのが教義の根底にあります。よって違法行為の横行には、統一教会の教義が密接に関わっているといえます。
また、信者からの献金活動はあくまで”宗教的活動”に当たり商行為として特定商取引法で取り締まることが困難なのです。
いずれにしても、統一教会への批判をする際には、統一教会への教義に踏み込んで批判することが不可避です。
そもそも、自らの曽祖父母世代や祖父母世代が行ったことについて、我々はいつまで贖罪しなければならないのでしょう?
日本人は、現行の歴史教育における近現代史の重要性と歴史認識の甘さをしっかりと認識しなければいけません。朝鮮半島の植民地政策の実態と戦後の日韓関係や歴史認識問題などに関する知識がなければ、教会側にいくらでもつけ込まれて、日本が永遠に韓国に贖罪することを要求されるのです。