前回の記事では、政教分離原則における根拠規定についての考察を行ったが、今回はいよいよ政教分離原則のメイン論点である「目的効果基準」と「総合判断基準」についての考察を行う。(永津篤史)
いずれの基準でも社会通念に従った相当性判断で
目的効果基準と総合判断基準に立ち入る前に、両基準に共通する最高裁の立場を確認したい。
国家と宗教の関わり合いについて、完全な分離が理想であるとしつつも、宗教的色彩がある私学助成や文化財への補助金などをめぐる完全な分離による不都合を回避するために、「我が国の文化的社会的諸条件に照らして相当とされる限度を超えるものを許さない」とした上で、一定限度での相対的な分離を認めている(津地鎮祭事件判決参照)。
前回の記事でも述べたように、日本は各種の宗教が多元的・重層的に発展してきたという歴史的経緯を有するから、最高裁は、国と宗教の完全な分離は事実上不可能であるという点を意識し、事案に応じた妥当な解決を図っているといえる。いよいよ目的効果基準と総合判断基準をめぐる相当性判断の変遷について、次の段落以降で解説する。
判例の変遷
まず、相当性判断に関して、最高裁がいかにその立場を変遷してきたかについて、各判決が出された年月順にまとめてみた。
*津地鎮祭事件=目的効果基準を用いた
*殉職自衛官合祀訴訟=目的効果基準を用いた
*大阪地蔵像事件=目的効果基準を用いたもので、空知太神社判決や孔子廟事件と類似する
*箕面忠魂碑訴訟=目的効果基準を用いたもので、空知太神社判決や孔子廟事件と類似する
*愛媛玉串料事件=目的効果基準を用いて違憲判決を出してる
*即位礼正殿の儀参列訴訟=目的効果基準を用いた
*<転換点>空知太神社事件判決=総合判断基準
*富平神社事件=枠組みの明示なし
*白山姫神社訴訟=枠組みの明確な明示はないが、目的や効果に注目した判断
*孔子廟訴訟=総合判断基準を用いて違憲判決を出してる