「北大の水産学部は水産界の東大である」
と某教授もおっしゃる通り、北大水産学部には水産関係の学問を学ぶための最高の施設とフィールドが確保されている。目と鼻の先に海、おしょろ丸もすぐ乗れる。最先端の研究成果や有名な研究者を輩出し、さらには就職にも有利という夢と魅力のあふれる学部である。北大にある12の学部の中でもひと際「北大らしさ」が色濃くにじみ出ている学部がそう、水産学部だ。
しかし、そこに臨む学生はというと、夢と魅力あふれるイメージはない(あんまり)。
「水産(笑)」などと、なんとなく下に見られがちで、意識低いイメージがついて回る。3年時の函館への移行も希望は薄く、「函館は半日で飽きる」と休みのたびに札幌へ戻ってくる学生が後を絶たない。
「水産を学びたい」という強い志を持った学生は、水産学部には少ない。
と、いうのはまあ偏見だ。それはそれは、大きな偏見なのだ。
ここに紹介しよう、大志を抱き北海道の地に赴いた一人の水産学生を。
水産学部ルーキーの森本さん。中高6年間を寄生虫研究に捧げ、寄生虫研究のために北大水産学部に入学した。なかなかにアウトローな人材である。
寄生虫女 モリモト
編集部 き、寄生虫がお好きなんですか?
森本さん はい、大好きです(笑)
編 (…変態だ)
森 「寄生虫が好き!」っていうとよく変な子だと思われます(笑)でも私からしてみたらかわいくて面白くて、好きで好きでしょうがないんです!正直寄生されたいです(笑)
編 (…絶対変態だ!!)…き、寄生虫ってどんなきっかけで好きになれるんですか?
森 中学一年のころに、生物部の顧問に見せてもらい惹かれました。
編 ああ、顧問が変態だったんですね。
森 顧問の先生は北大の水産出身なんです。中高一貫の学校だったんですけど、中一の春に部活を決めようかなって時期に、生物部で「解剖新歓」があって。他の学生と比べ躊躇なくバサバサ解剖していた私を見た先生から「一緒に解剖せえへん?」ってスカウトされました笑
編 斬新なスカウトですね。
森 ただ、その時は「ふ~ん、寄生虫って面白そうやなあ」くらいやったんですけど、中二の時に衝撃的な出会いがあって。中二の夏合宿でフグを解剖したんです。皮を剥いだら、フグの口から「ウオノエ」という寄生虫が出てきて。
森 強烈な衝撃を受けました。
編 確かに…
森 かわいいですよね、一目惚れです。
編 え?
寄生虫は生物の最終形態
編 寄生虫の魅力ってなんですか?
森 寄生虫の魅力的な点は数えるとキリがないのですが、一つはその生き方です。寄生虫はちょっとでも寄生する相手を間違ったら生きていけない生き物なんです。他の生物ありきの綱渡り生活なんてすごいと思いませんか?しかもあの子たちは宿主に頼るあまり自分たちは生殖器官しか持っていなかったりするんです。消化器官や感覚器官すらないなんて、普通に考えたらあり得ないですよね(笑)私はある意味で寄生虫は生物の最終形態ではないかと思います。
森 その多様性も興味深い点だと思います。一言で「寄生虫」といっても、その種類は多岐にわたります。蚊やノミも寄生虫ですし、有名なマラリアなども寄生虫です。カニにも、ダンゴムシの仲間にも寄生生活をおくるものがいます。全く違う環境で生きる似ても似つかない生物なのに、「寄生」という生き方に辿り着いた生き物たちは多くいるんです。こうやって考えるとすごく面白くないですか?
編 (ちょっと面白く思えてきた…)
森 あとは何といってもあのかわいさですよね!これが一番共感してもらえないというのはよく分かっているんですが(笑)あのフォルム、動き方、寄生している様!全くもってかわいいとしか言いようがないです。もう大好きです。私は中学一年のころから寄生虫について調べてきましたが、今でも解剖した生物から寄生虫が出てきたときはドキドキしますし、見入ってしまいます。
編 (ちょっと何言ってるかわかんないっす)