JagaJaga – 北大生応援メディア – 5分で大志を拾い読み。
北海道時代、そして東京へ
「入社して最初に配属されたのは札幌本社で5年間、そのあと釧路支社4年半。釧路ではまず『町村回り』というのを1年半ほどやりました。釧路市のとなりに白糠町と合併する前の音別町という町があって、そこで役場や漁協、学校、一般住宅、幼稚園などをまわって話を聞いていました。知ってますか？白糠町の人口が1万人くらい、音別町が3千人くらい。そういうところまで行くのは北海道新聞と地元の釧路新聞くらいなんです。そうするとすごく関係性は近くなる。その次は釧路支社で経済担当を3年ほどやりましたが、経済といってもそれほど大きくはないですから、地元の商店街とか和商市場という市場があるんですが、そこをまわって『何か話題ないですかー？』と聞いていくというようなもので。それでその後は札幌本社に戻って経済担当を3年半やりました。銀行、JR、飛行機、運輸、不動産など、札幌の経済に関わるものはほとんど取材しましたね。それから、東京にいって今度は政治担当をすることになって。東京なのでやはり国会や首相官邸に取材に行くんですが、ずっと経済をやっていて、政治といえば白糠町とか音別町役場を取材したくらいだったので、そのギャップは面白かったですね。東京は5年で、そのあとロンドン支局に配属されたんですね。」
―ロンドンということは、さらに大きなスケールの取材があったのでしょうか
「ええ、もちろん大きな話の取材ももちろんありました。でも、いろんな国に行っていろんな人に会って話を聞く取材もあるわけで、すると気づいたことがありました。そういう取材っていうのは、ここでやってる取材も白糠や音別でやっていた取材も同じなんだな、と。ルポとかで一般の人に会うときなんかは、逆に札幌や東京でやっていたこととは違うな、というのをすごく感じて。札幌や東京では、経済なら大きな企業の社長や銀行頭取、政治なら政治家や官僚などが取材対象で、『限られた人、世の中の上のほうの人、権威や権力のある人』に取材をしているなという印象でした。でもロンドンでは、一般の人を取材することが多くて、釧路支社時代に町村回りなどで色々な場所に行って色々な人に会うという取材をやっていたときと似ているし、その経験がすごく役立っているなということはロンドンにきて思ったことですね。」
―地方での取材、という点で似通っている。確かに考えてみれば納得です。ただ少し不思議な感じもしますね。
欧州全域での取材活動
―取材活動の方はトピック選びなど、どのようにされているのでしょうか？この欧州を一人で担当するのは相当大変なことだと思いますが…。
「そうですね、会社から何か指示されることはそれほどないんですね。ヨーロッパは確かに広いですが、フランスやドイツなど大きな国の選挙、英国のEU離脱など、日本でも相当大きく報道されるものは、やはり日本にいる人々も興味がある。そういったものは現地に行って取材をして記事を書くということですね。そしてそれ以外は、（自分が）興味のあること、北海道につながっているような話題を取材します。最近で言えば、札幌も立候補しているオリンピック開催地。これについて最有力と言われているのがスイスのシオンという町ですが、そのシオンではどういうオリンピックを開こうとしているのか、どういう狙いがあるのか、また、反対派にはどういう理由があるのか。そういうことを取材したいと思って、反対派の人々や現地のスポーツ大臣、大学教授などに話を聞きに行きました。もちろん向こうも札幌っていうのは（ライバル都市として）知っているけれど、みんな話せることは話してくれる。すごく温かく迎えていただきました。」
―では地方紙だからといって特別困難を感じることはなかったのでしょうか？
「そのときはそうでしたね。例えば自己紹介をするとき、こちらの人は基本的に日本の新聞は知らないから、『ヘッドクウォーターは札幌という日本の北にある島にあって…』と説明するんですが、朝刊100万部夕刊50万部ほど出ていますというと、驚かれます。おぉ、すごいねと。なぜなら、ヨーロッパでは大手紙のタイムズやガーディアン紙でも20万部とか30万部くらいだから。なので、日本の大手紙には及ばないにしても、この数字は、イギリス国内に行ってもどこに行っても同じく驚かれるし、時間が空いていれば会ってくれますよ。」
