今年の9月、小雨のぱらつく大通公園で多様性を認めあう社会の実現を目指すパレードである「さっぽろレインボープライド2022」が開かれた。一般参加者を募っての開催は2年ぶり。集まった約800人の参加者は、虹色の旗を掲げ市内を歩いた。
年々LGBTQ+の認知度・関心度が高まりつつある今でも、当事者には拭いきれない悩みがある。今回は、北大公認LGBTQ+サークル「虹の集い」で活動する小鳥遊(たかなし)さん・白木さんに話を聞いた。(聞き手:永津篤史)
関係性を守るため、辻褄合わせの嘘重ね
○LGBTQ+の当事者として、生きづらさを感じたことはありますか?
自分自身がLGBTQ+当事者であると自覚したのは、大学に入ってからです。なので学校現場で辛い目にあったという経験はありません。ただ、関係性が変わってしまうのを恐れて、自らのセクシュアリティを伏せた経験は何度もあります。「何かサークルに入っている?」などの何気ない問いかけにも、嘘をつく・答えないということが増えていきました。発言の矛盾を防ぐために、嘘に嘘を重ねてしまったこともあります。(小鳥遊)
言う人と言わない人 、家庭内でも分かれる対応
○カミングアウトは重要だと思いますか?
カミングアウトの重要性は人によって違うと思います。ただ自分自身は自らのセクシュアリティを家族や信頼できる友人に伝えられないことへの後ろめたさをずっと感じていました。いつも心の奥底にあるのは、自分の全部を知ってほしいという気持ちでした。 かといって誰かれ構わずに、カミングアウトをすればいいものだとも思いません。カミングアウトする人を自分で選んでいく必要があると思います。実際、自分自身も姉と母親にはカミングアウトしましたが、父親と弟にはカミングアウトしていません。弟には、予期せずバレてしまいしたが。家族の中でもカミングアウトした人と未だにしていない人がいます。(小鳥遊)
「小出し」でカミングアウトできるかを確かめて
○カミングアウトをした後で、自分の中での気持ち・周りの反応などで変わったことがあれば、教えてください。
自分はカミングアウトする前には、まずLGBTQ+関連の話題を小出しで話しながらこの人にカミングアウトできるか否かを入念に確かめます。実際に自分の母に対しては、「今からレインボープライドのボランティア行ってくるね」や「大学の講義でLGBTQ+の問題について習った」などと少しずつ話をしていました。そんな具合に初めの段階で、LGBTQ+の問題に抵抗感のある人かを確かめます。 でもその確認を乗り越えて一度カミングアウトをしてしまえば、「虹の集い」の活動や自分の想いなどを心置きなく話せるようになりました。現に、自分が打ち明けた後、母は積極的にLGBTQ+に関するテレビ番組や新聞記事などを自分に届けてくれるようになりました。(小鳥遊)
一対一の人間関係、対応は多種多様
○カミングアウトされた側にはどのようなことに気を付けて欲しいと思いますか?
自分自身は、マイノリティか否かで態度を変えることはしないですね。態度を変えることは逆にその人に対して失礼にあたるとも感じているからです。でもカミングアウトを受けた後の言葉遣いは、気をつけるようにしています。例えば「彼氏/彼女はできた?」という質問を「恋人できた?」という言い方に変えたりだとか。相手に失礼にならないように一定の配慮は必要であると思います。 ただ対応してほしい人の種類も、行うべき対応の種類も多種多様であると強く感じます。生身の人間同士、その人たちに合った関係を模索してほしいです。(白木)
上映会後、即決で加入を決めて
○なぜ勇気を出して、 虹の集いに参加しようと思ったのですか?
自分自身、大学入学前から社会的弱者に対する処遇について関心がありました。そして大学入学後、虹の集いの顧問を務める瀬名波先生の「私たちの世界:セックス・ジェンダー・セクシュアリティを考える」という講義を受けたのが、虹の集いを知ったきっかけです。その後に参加した上映会で、人が足りないから、ぜひ執行部に入ってほしいとお願いされ、虹の集い執行部への参加を決めました。現在虹の集いの執行部は自分を含めて5人しかいませんが、同じ志を持った仲間に出会えて、本当によかったです。(小鳥遊)
「居場所づくり」と「規模拡大」の間で
○LGBTQ+のコミュニティの発展によって、参加した個人、また社会にもたらされる影響はなんだと思いますか?
虹の集い自体、設立当初は当事者のみの居場所づくりを目的として始まりました。なので最初の方は「つどい」(月に一度開かれる虹の集いが主催する例会)を開いても、誰も参加者が来ないという日が多くありました。そこから徐々にではありますが、当事者以外の参加も認めるようになり、その頃から団体としての規模がすごく大きくなりました。毎回の「つどい」にも必ず新規さんがきてくれるようになりましたし、虹の集い公式LINEへの登録者も100人(*2022年12月9日段階で131人)を超えました。でも規模が大きくなりすぎて、参加者の居場所がなくなりつつあるようにも感じます。規模拡大と当事者の居場所づくりという当初の目的の間で、今は悩んでいます。一方で規模が大きくなったことで北大内でのLGBTQ+への関心度や知名度は高くなっているように感じます。北大公認という肩書きもあるので、取材を受ける際などでもより信頼していただけるようになりました。活動を通して、LGBTQ+に関することがもっと広まれば、社会も変わってくると感じます。(小鳥遊)