北海道大学法学研究科(大学院=修士課程)の入学者選抜を巡って、日本人学生の入学が難しくなっている。高齢による退官や在外研究などで入学後の指導教官がなかなか決まらないのが表向きの理由だが、現在も北大の法学研究科は多くの留学生を受け入れており、頑なに学生の受け入れを拒否する指導教官の態度には不信感も広がっている。(永津篤史)
刑事系教授は全滅、退官や留学などで
北海道大学法学部に在籍する男性は、卒業後の進路として当初は法学研究科への進学を希望していた。学部時代から特に興味のあった刑事法分野を大学院でも専門的に研究したいと考えたからだ。法学研究科に入学するためには、年に2度実施される特別選考入試か年に1度しかない一般選抜を突破する必要がある。
*特別選考入試=学部時代に一定の成績を収めた学生を対象に、事前の研究計画書と口頭試問のみで大学院へと進学できる制度。法律科目を最低2科目受験する必要がある一般選抜と比較しても、学生への負担が小さく、法学部から院進する場合の内部選抜として機能している。
男性は学部時代に一定の成績を残していたため、特別選考入試の対象に入っていた。「研究計画書と口頭試問(面接)のみで入学できる特別選考入試の方が圧倒的に有利だと思いました。修士課程に在籍する先輩から、受験前に指導教官となるべき先生と話をつけておいた方がいいというアドバイスを貰ったので、特に刑事法の先生に連絡を取り続けました」。法学部から出されている「本研究科所属教員一覧」を確認しながら、法科大学院の専任教員などで指導教官を兼ねることのできない教員を除いた3名の教授に連絡を取った。しかし、3名とも男性を受け入れてくれることはなかった。高齢による退官や海外大への留学予定があるというのがその理由だった。
民事系教授も受け入れ拒否、院生過多で
刑事系の研究ができないことに胸を落としながらも、男性は民事系の教授に連絡を取った。学部時代から面識のある教授であり、受け入れてくれるのではないかという期待感があった。しかし、ここでも男性が受け入れられることはなかった。断りの文面こそ丁寧だったが、メールに記載された「現在、多くの研究生を抱えているため」との理由に肩を落とした。
中国人留学生が最多の43名、不当拒絶を断ち切って
結局、男性は法学研究科への進学を諦め、現在は他大学への進学を目指して勉強しているという。「もちろん残りの先生に手当たり次第連絡をとっていれば、誰か受け入れてくれる先生がいたかもしれません。しかし、闇雲に指導教官を探し回ることで、本当にやりたかった研究テーマからどんどんと遠ざかっていくような気がしたので、結局母校への進学は諦めざるを得なかったです」と力無く笑った。
*留学生の内訳=中国人留学生43名、台湾人留学生10名、韓国人留学生2名、ロシア人留学生1名
北大法学研究科のホームページ上で公開されている「留学生の状況」によれば、現在法学研究科には43名の中国人留学生が在籍している。この数は、他の外国人留学生と比べても破格の数だ。中国人留学生の過剰な受け入れを背景として、日本人学生の受け入れが不当に少なくなってはいないか。実際に法学研究科で学んでいる日本人学生は、「特別選考入試は本来、法学部の優れた学生が優先的に大学院への進学を果たすための制度。受験資格を有している学生の受け入れを教授の裁量で不当に拒絶することは言語道断である」と憤る。公正公平な入試制度を設計する責務を北大側は忘れてはならない。