トップページ > 記者解説 > <記者解説>目的効果基準と総合判断基準の使い分けについて

<記者解説>目的効果基準と総合判断基準の使い分けについて

調査官解説の記載

まず両基準の使いわけについて、孔子廟事件における調査官解説=最高裁判所判例解説(高瀬保守)の内容を紹介したい。(原文ママ)

判例は、津地鎮祭訴訟判決以降、一貫して目的効果基準による判断を重ねており、空知太神社訴訟判決判文中で目的効果基準を用いた津地鎮祭判決及び愛媛玉串料事件判決を明示的に引用していることに鑑みると、目的及び効果という着眼点の重要性はおよそ否定されるべきではなく、事案のよっては引き続き目的効果が違憲審査の際の主要な着眼点になる場合があると考えられる。(中略)この場合も、従来の目的効果基準に係る一般論や考慮要素をそのまま用いるのではなく、むしろ総合判断の枠組みの中で、目的及び効果を主要な着眼点の一つとして考慮するという方向性が考えられよう。

調査官解説の解説によれば、目的効果基準の意義はいまだに失われていないという理解が可能であり、中略以降の内容にもあるとおり、総合判断基準の中の「当てはめレベル」で目的効果基準を用いるという新たな理論構成も可能であると考える。

平成22年判決・藤田裁判官の補足意見

空知太神社事件判決に関連して、藤田裁判官がつけた補足意見についても触れる必要があるだろう。

問題は結局のところ、「その関わり合いが我が国の文化的社会的諸条件に照らして相当とされる限度を超えるか否かの判断に際しての「国家の宗教的中立性」の評価に関する基本姿勢ないし出発点の如何に懸かる。(中略)本件において合憲性が問われているのは、多数意見にもあるとおり、取り立てて宗教外の意義を持つものではない純粋の神道施設について、地方公共団体が公有地を単純にその敷地として提供しているという事実である。過去の当審の判例上、目的効果基準が機能せしめられてきたのは、問題となる行為において、いわば「宗教性」と「世俗性」とが同居しておりその優劣が微妙である時に、そのどちらを重視するかの決定に際してであって、明確に宗教性のみを持った行為につき、さらに、それが如何なる目的をもって行われたかが問われる場面においてではなかったということができる。

すなわち、宗教性の判断がつきずらい事案では「目的効果基準」が、宗教性が一見して明らかな場合には「総合判断基準」を使い審査するべきという結論だてになるだろう。この見解に立脚すれば、公有地を約50年にもわたって地域の氏子集団に無償で貸し続けていた空知太神社事件の際に、総合判断基準が採用されたのにも納得が行く。その他、目的効果基準を採用してしまえば原則違法、例外許容という背政教分離原則の趣旨を没却するのではないかという学説からの指摘がある点も留めておきたい。

課題:権力側の「言い訳材料」に成り下がるな

今回は記者解説という中で政教分離に関する自分なりの考察をさせてもらった。最後に、政教分離原則について、一点私なりの課題点を指摘させていただき、結びとしたい。前回の記事でも述べたとおり、政教分離原則とは、個人が有する信教の自由を確保するための制度的保障である。もっともこのような性格を無視し、公権力側が自己の権力行使を正当化するために政教分離原則を持ち出すという行為が増えたようにも感じる。エホバの証人剣道受講拒否事件では、高専側が代替措置を取らなかった自らの行為について、政教分離原則違反になる点を理由にこれを正当化しようと試みていた。結果として、生徒に対する退学処分は無効になったものの、権力側による政教分離原則に関するこのような主張の是非についてもより研究が進められるべきだろう。

About 永津篤史

「恋」と「法律」に振り回される法学部3年。 「縁」を求めて、今年5月にJagaJagaに加入。 夜はメンヘラ気味になるので、記事はお天道様が出ているうちに仕上げるのが自己流。家系ラーメンが1番の好物。 偉大な先輩方に早く追いつきたい!!